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There's Something Fishy

映画研究、文芸批評、テニス評論

「第6回「音響」という視座」テニス批評宣言ーー音響面から考える錦織圭の強さの秘密

テニス批評宣言ーー音響面から考える錦織圭の強さの秘密

 

 目下世界ランキング四位を自らの定位置に決めたらしい錦織圭のコート別の勝率を確認してみると、興味深いデータが得られる。アウトドア(室外)で行われた試合での通算成績が187勝99敗で勝率65.4%であるのに対して、インドア(室内)での成績は48勝16敗となっており、その勝率はなんと75%にも達しているのである。むろん行われた試合の分母が大きく異なっているため公平な比較とは言いがたいが、それを考慮に入れた上でなお、これだけ有意な差が生じている以上は次のように言ってしまって構わないだろう。錦織圭は、屋外の試合よりも屋内の試合を得意にしていると。だとすれば、それはなぜなのか。また、本稿はその問いに答えることを通して、同時にテニス批評の可能性を考えるための試みでもある。

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http://www.atpworldtour.comより。)

 

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(左から順に今年の勝敗、勝率、通算の勝敗、通算勝率である。

http://www.atpworldtour.com/en/players/kei-nishikori/n552/fedex-atp-win-lossより。) 

 

 議論に入る前に、テニスコートの種類について、インドア/アウトドア以外の観点から簡単に整理しておこう(既に知っているという方はここからの二段落は飛ばしてもらって構わない)。一般的なコートとしては大きくハード(コンクリートあるいはアスファルトの基礎に合成樹脂のコーティングを施したもの)、クレー(土)、グラス(芝)の三種がある。テニスはコート表面の材質によって試合結果が大きく異なってくるスポーツであり、とりわけ、トッププロの世界ではそれが顕著にあらわれる。それぞれのコートの違いを特徴づけるのは主としてバウンド後のボールの跳ね方である。クレーではバウンド後に大幅に減速し、グラスではバウンド後の速度が速いまま、低い軌道で滑るような跳ね方をする。ハードコートはおおむね両者の中間的な性質を備えている(たとえば同じハードであっても、むろんコートによって速さや跳ね方に大きな違いが生じるため、さらに低速ハード、高速ハードなどと呼んで区別されることになる)。

 

 個々の選手のコート特性について詳細に検討しようと思ったら軽く本一冊分以上になってしまうので、ここではごく大雑把なまとめ方をしておくが、一般にクレーはストローカー向きでグラスはビッグサーバーやネットプレーヤー向きと言うことができる。たとえば、クレーコートで圧倒的な強さをほこるラファエル・ナダル(スペイン)が「赤土の帝王」あるいは「土魔人」と呼ばれるのは、彼のコート適性を如実に反映したものである(クレーでの通算勝率は驚異の92%)。とりわけ、レッドクレー(赤土)で開催される全仏オープンローラン・ギャロス)での五連覇(2010〜14年)を含む通算九度の優勝はいずれも空前絶後の大記録である(クレーコート開催の大会で、一度も負けることなくすべて優勝した年も複数ある)。一方、ロジャー・フェデラー(スイス)が「芝の王者」と呼ばれるのは、全盛期の彼が芝の代名詞たるウィンブルドン全英オープン)で圧倒的な成績を収めたからに他ならない(五連覇を含む七度の優勝、芝での通算勝率は87.7%)。ちなみに目下世界ランキング一位の座に君臨しているノバク・ジョコビッチセルビア)は、ハードコートを比較的得意としている選手である(全豪オープンで三連覇を含む五度の優勝。)。

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ナダルの主要クレー大会での戦績。TENNIS LOVERS「〔今日初戦〕表で見るクレーキング・ナダルの絶対的10年間」(最終閲覧日:2015年8月20日)http://www.plus-blog.sportsnavi.com/bigfourplayers/article/304/page/2。)

 

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TENNIS LOVERS「〔今日初戦〕表で見るクレーキング・ナダルの絶対的10年間」(最終閲覧日:2015年8月20日)http://www.plus-blog.sportsnavi.com/bigfourplayers/article/304/page/2

 

 錦織のコート別の勝率はそれぞれクレー:69.7%、グラス:57.1%、ハード:68.0%となっており(二番目の図表を参照のこと)、グラスを不得手にしていることがわかる。現在のテニス界では、インドアとは基本的にはインドアのハードコートを指すことになる(それまでインドアで開催されていたカーペットコートの大会が2009年以降すべてなくなったためである)。したがって、錦織圭のインドアの勝率75%というのは、ハードコートのうちでも特にインドアで行われた試合(インドア・ハード)を得意としているということを意味するのである。じっさい、錦織の通算優勝回数10回のうち、4回がインドア(ハード)の大会のものだが、これはインドアとアウトドアのそれぞれの試合数の総数が64と286(つまりおおむね1:4.5)であることを考えれば、明らかに偏っている(優勝回数の比率は2:3、むろん単純に比較できる数字ではないが)。また昨年11月に錦織が日本人として初めて出場したツアー・ファイナルズ(年間成績上位8名だけが参加できる大会)での大健闘(特にアンディ・マレーに対する初白星)や、全米国際インドアテニス選手権での今年度最初の優勝もやはりインドア・ハードのコート上でなされたものである。また、錦織が初めてジョコビッチフェデラーに勝利したのもインドア・ハードの大会においてだった。

 

 錦織がインドア・ハードに異常に強いことはファンの間ではおおむね共有されている事実であり、その理由についても様々な議論が交わされてきた。有力なものとしては、不確定要素が最も少ない環境としてインドア・ハードを捉えるものがある。ここで言う不確定要素とは、雨や風による影響や、コートのイレギュラー等のことである。つまりインドア・ハードであれば雨や風の影響をほぼ回避することができるのである(イレギュラーが最も少ないのは当然ハードコート)。錦織に取っては、この中では風による影響が最も大きいように思われる。それは錦織の身体的な前提とプレースタイルとに死活的に関わってくる要素だからである。

 

 まず、錦織は男子のトッププロ選手の中では比較的小柄な選手であり、その機動力に基づくストロークを武器にしている選手だという前提がある。このとき風の影響が真っ先に出ると考えられるのはサービス(サーブ)である。ATPが発表している錦織の公式身長は(なぜか昨年から2cm伸びて)180cmとなっているが、たとえば先日のシティ・オープン(ワシントン)決勝で打ち破ったジョン・イズナー(アメリカ)の身長は208cmもあり、リーチの差も加味すれば、サーブの際の最高到達点の差は優に50cm以上はあるものと考えられる。このリーチの差が何を意味するかと言えば、たとえばサーブのトスが風で10cm流された場合、錦織が受ける影響とイズナーが受ける影響とを考えてもらえば容易に想像できるだろう。そうでなくとも打点の高さがそれだけ違えば、繰り出されるサーブの威力には決定的な差が生じる(じっさい、イズナーは強力なサーブを武器にしている選手である)。

 

 テニスという競技では二人の選手がゲームごとに交互にサーブを行い、先に6ゲームを先取した方がそのセットを取ることができる。グランドスラムや国別対抗戦のデビス・カップでは先に3セットを取った方が勝者となる5セットマッチ制であり、それ以外の大会は3セットマッチ制で行われる。原則として、セットを取得するためにはゲーム数で2つ以上の差をつけなければならない。すなわち、ゲームカウントが6−5となった場合は、さらにもう1ゲームを行って、その結果7−5となればセットを取得できる。もし6−6になった場合は、タイブレークと呼ばれる7点先取の変則的なゲームを行い、それを取った方が7−6でそのセットを取得できる。ここで重要なのは、テニスでは、最初に打球できるサービス側(サーバー)が圧倒的に有利であり、相手に勝利するためにはその相手のサーブをどこかで打ち破らなければならないということである。テニスでよく見かける6−4や6−3というゲームカウントは、相手のサービスゲームを一度破り(ブレイク)、自分のサービスゲームを取り(キープ)続けた結果生じるものである(もちろんお互いにブレイクし合った場合も考えられるが)。

 

 特に男子プロの世界では、自分のサービスゲームはキープするのが当然で、その上で相手のサービスゲームをブレイクして勝利を得るというのが基本的な構図である。極端なことを言えば、テニスとは自分のサービスゲームでキープを続け、タイブレークで交互に回ってくる自分のサービスポイントを取り続けていれば、絶対に負けることがないスポーツなのである(この事態を指してテニスは欠陥スポーツだという人もいる)。もしも毎回確実にサービスエースを取ることのできるサーブを身につけたら、仮にストロークが全く打てなくても、その選手が負けることは絶対にない(相手がタイブレークで一度でもダブルフォルトを犯せば勝てる)。だからこそ、年初のようにジョコビッチがイボ・カルロビッチ(クロアチア)のようなビッグサーバーに負けるということが起こりうるのである。ジョコビッチがいくら華麗なストロークや技ありのドロップボレーを決めたところで、カルロビッチがサービスエースを連発して封殺してしまえば、ジョコビッチのそのポイントは試合展開上無意味なものとなる。テニスに総合的な技量の充実を求める観客からは、サーブのみで淡々とポイントを取り続けるビッグサーバーのスタイルは嫌われがちであり、したがって、ビッグサーバーは一般にヒール役(悪役)のイメージを担わされることが多い。

 

 話が逸れたが、小柄な錦織は機動力と読みの鋭さ、およびそれに伴うストロークの攻撃力を武器にしている選手であり、低身長ゆえにサーブが弱いのが特徴である。そのため、自分のサービスゲームを落としても、それ以上に強力なリターンとストロークを駆使してブレイクを積み重ねて試合をものにしていくことが多くなる。したがって、風によって自分のサーブの安定度が下がる一方で、ビッグサーバーがサービスエースを量産し続けた場合、状況としては極めて不利になる。自分は風の影響でキープがより困難になるにも関わらず、相手は風に関係なくキープを続けられるからである(むろんここではかなり乱暴な議論をしているが、傾向としてはそうだということである)。リーチの短さはストロークの際にも言えることで、風で揺れ動くボールをミートするのはより難しくなる(特に錦織は自分の感覚を頼りにする天才肌の選手であるため、その影響は甚大であると思われる)。また、コースを狙うにしても、風によって流されることを考慮してショットを構成しなければならなくなり、難易度はあがる。武器であるストロークで普段のような攻撃力が発揮できないとなれば、勝利をあげるのはより難しくなる。先日の全仏オープン準々決勝ツォンガ(フランス)戦では、錦織が強風に翻弄される中、序盤に立て続けにブレイクされ、あっという間に2セットを失った姿が記憶に新しい(その後、強風による観客席の看板落下の影響で中断を挟み、ようやく冷静さを取り戻して2セットを取り返すものの、最終セットを落として敗れている。私はこの錦織敗北のショックで一週間近く寝込むことになった)。

 

 長くなってしまったが、ここまでがテニスという競技および錦織圭という選手を理解するための一般的な前提である。本稿では、前段までに見てきた理由以外に、錦織がインドア・ハードに特に強い理由として、打球音をあげたい。プロテニス選手がラケットのスイートスポット(芯)でボールを捉えたときの打球音は、傍で聞いていても気持ちがいいほど見事なものである。まして、ストロークを得意とする選手自身は、その音をもたらす振動を文字通り身体で受け止めながらプレーをしているわけで、その打球音のリズムは、次のショットの選択と構成を考える上で、重要な要素となりうるのではないかと考えられる。そして、インドアとアウトドアのコートでは、打球音の響き方が異なっており、当然インドアの方が音はより大きく響く。それが錦織のプレーのリズムに影響を与えるのではないかということである。もとより、テニス選手が踏んでいるスプリットステップにしても、ナダルのチック的動作に代表されるようなサーブ前のルーティンにしてもそうだが、(他のスポーツと同等かそれ以上に)テニスはリズム的要素を多く含んだスポーツである。そして打球音の快感に浸ることができるとき、錦織圭はさらに強くなるのではないか。

 

 錦織は男子テニス界屈指のショットメイカーとして知られる。強力なフォアハンド(一時期「エアケイ」の名で有名になったのはフォアのジャックナイフ)に加えて、そのフォアに遜色ないツアートップクラスの強力な両手バックハンドを持ち、いずれもクロスとストレート(ダウン・ザ・ライン)のコースに打ち分けられる精度の高さを備えている。現在のテニス界で、錦織とまともにストローク戦を繰り広げて打ち勝てるのは、好調時のジョコビッチ(世界ランク一位)とフェデラー(世界ランク三位)、それから絶好調時のワウリンカ(スイス、世界ランク五位)くらいのものだろう。じっさい、錦織はストローカーとの対戦には滅法強い。ランキング爆上げ中の気鋭の若手ダヴィド・ゴフィン(ベルギー)とは今年に入ってから初めて対戦してここまで三戦全勝。先日の対戦でもウィナー(相手に触れさせずにポイントを奪うこと)を量産し、終始圧倒してみせた。また、ここ数年常にトップ10以内かその付近に位置しているダヴィド・フェレール(スペイン)との相性もよく、今年に入ってから一つ負けはしたものの、その前には五連勝しており、先日の対戦でも難なくストレート勝ちを収め、リヴェンジに成功している。二人とも生粋のストローカータイプであり、じっさいに素晴らしいストロークを持っているのだが、いずれも錦織には劣る。

https://www.youtube.com/watch?v=hAN68IC3lVQ

(ツアー・ファイナルズ2014の対フェレール戦[インドア・ハード]、錦織が終始ストロークフェレールを翻弄していることがわかる。特に4分22秒あたりで繰り出されるドロップショットは絶品で、おそらく錦織のベストショットの一つ。そしてこのドロップは単独で存在しているわけではなく、錦織がその前のショットの組み立てに成功した結果である。ドロップショットというのは、言わば音楽のように流れるショット展開の中で、相手の予想を裏切ってその流れを自分の意志で中断させるということであり、それが許されているときの錦織はさしずめ指揮者の位置にいると言えるかもしれない。)

 

 このストロークの多彩さに加えて、錦織はネットプレーも随所で有効に使っており、さらには上記動画で確認できるような相手の虚をつく華麗なドロップショットをも使いこなす(相手のブレイクポイントでも平然と変態的なドロップを決めてしまう選手を私は他に知らない)。錦織にストロークのリズムを作らせるというのは、同時にボレーやドロップショットを有利な状況で使うという選択権を錦織に与えることになり、当然、そのショットの成功率もあがる。逆に、錦織のドロップショットの失敗で忘れがたいのは、今年の全豪オープン準々決勝ワウリンカ戦の第3セットタイブレークで犯したものである。7点先取のタイブレークでワウリンカの1−6とリードされてから5ポイントを取り返す粘りを見せ、6−6としたところで錦織は絶妙なドロップショットを繰り出した。ワウリンカは完璧にタイミングを外されており、打球を追うことすらできていなかったが、ボールは無情にも白帯(ネット最上部の白い部分)にかかってしまう。次のマッチポイントでワウリンカがサービスエースを決めて、ゲームセット。2セットダウンからの逆転勝ちは錦織には珍しくないことであるだけに、あのドロップが決まっていれば一気に試合がひっくり返った可能性もある。結局、劣勢(この試合、錦織は終始ワウリンカの強力なサーブと片手バックハンドに翻弄されており、ペースを掴むことができなかった)にあるときに、自分のリズムを曲げてでも無理矢理に繰り出したドロップショットが文字通りほんのわずかの差で届かなかったのだ(このときにこそ、ほんの少しの追い風が吹いてくれていたならばと思わずにはいられない)。

https://www.youtube.com/watch?v=Uik9oRosx5E

(この動画はそのポイントと次のマッチポイントだけを収めたものである)

 

 したがって、錦織対策としてはいかに錦織に自分のリズムでストロークを打たせないかということを考えなければならない。そうすることで必然的に錦織のドロップショットやネットプレーの脅威も削ぐことができるのである。また、これは同時に、錦織に気持ちのよい打球音を響かせてはならないということをも意味する。むろん、相手のペースを乱すというのは、錦織に限らず、それどころかテニスにも限らない話であるが、自分のリズム次第で一気に勢いに乗れることもあれば、逆にあっという間に敗退してしまうこともある錦織には特に当てはまる話であると思われる。じっさい、錦織が怪我や疲労以外の理由で格下にストレートで負けた試合としてはインディアンウェルズで行われたマスターズ(グランドスラムに次ぐ規模の大会)の四回戦、対フェリシアーノ・ロペス戦が記憶に新しい。スライスを多用して錦織のリズムを崩しにかかってきたロペスに対して、最後までストロークで主導権を握ることができず、逆に要所を押さえられて負けてしまった。また、つい先日のマレー戦も似たような展開で、錦織のストロークを警戒したマレーは、まともに打ち合うことを避けて、バックハンドでスライスを多用する戦術を採用していた(最もこの試合に関しては錦織の疲労が限界を超えており、2セット目がほとんど試合になっていなかったので[0−6]、単純な比較はできないが)。

 

 自ら自分にとって心地のよいリズムを生み出し、そしてそのリズムを突如として中断してしまう野蛮な美しさ。それは文字通り相手を置き去りにすることであり、そうしたプレーができているときの錦織は、自分自身でも言っているように「勝てない相手がいない」(じっさい、先日ナダルに勝ったことで、錦織は長らく主要大会とランキングの上位を独占してきたBIG4と呼ばれる存在全員から勝利を挙げたことになる)。そして、そのリズムを支える要素として打球音がある。これまであまり顧みられることのなかった観点だと思われるが、これは間違いなく錦織がインドア・ハードで見せる突出した強さの一因となっているものである。また、スポーツ批評の試みとしては、かつて草野進と愉快な仲間たち(蓮實重彦渡部直己など)が行ったものがあるが(その成果は草野進編『プロ野球批評宣言』[1]蓮實重彦『スポーツ批評宣言――あるいは運動の擁護』[2]などにまとめられている)、そこではもっぱら運動に焦点が当てられており(むろんこれは重要かつ正当な姿勢ではある)、スポーツにおける音響面への配慮はほとんど見られない。たとえばプロ野球ドーム球場を批判する箇所においても、高くあがったフライの運動を途絶えさせてしまう屋根を問題とする一方で、屋外球場とドーム球場の音響の違い等については触れられていない。あるいは、彼らがプロ野球を愛する一方で、高校野球を受け入れられないのは、木製バットと金属バットが発する打球音の違いによるところも大きいのではないかと思われるが、その点への言及もどうやらないようである。蓮實の映画批評の限界もこの観点から再考することができるかもしれない。すなわち、画面分析の充実ぶりに比べて、映画の音響に対する配慮が相対的に欠けてしまうのである(かつて四方田犬彦が、蓮實重彦には映画と野球というアメリカ的要素があるにも関わらず、ジャズが抜けている不思議さを語っていたことを思い出す)。いずれにせよ、未来のスポーツ批評に向けて、我々は運動に眼を凝らすだけでなく、その運動に由来する音響にも耳をそばだてていかなければならないだろう。

 

[1] 草野進編『プロ野球批評宣言』、新潮文庫、1988年。

[2] 蓮實重彦『スポーツ批評宣言――あるいは運動の擁護』、青土社、2004年。

 

プロ野球批評宣言 (新潮文庫)

プロ野球批評宣言 (新潮文庫)

 

 

 

スポーツ批評宣言あるいは運動の擁護

スポーツ批評宣言あるいは運動の擁護

 

 

 

頂点への道

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