There's Something Fishy

映画研究、文芸批評、テニス評論

2015-01-01から1年間の記事一覧

映画評論大賞2015

拙論「國民的アイドルの創生―—AKB48にみるファシスト美学の今日的あらわれ」が雑誌『neoneo』の主催する「映画評論大賞2015」の受賞作に選ばれました。 webneo.org 論考の内容は、スーザン・ソンタグによるレニ・リーフェンシュタール批判の枠組みを援用した…

舞城王太郎『淵の王』

既存の文学的枠組みの拡張に成功した小説を純文学と呼ぶならば、舞城王太郎の『淵の王』こそ、その名にふさわしい。 ネット上のいくつかのレヴューで既に指摘されているように、本作品の三人の主人公を見守っている語り手の「守護霊」たちは、どうやらそれぞ…

「アベセデール」雑感ーーあるいは人生に伏線を張ること

世間の流行に乗って(というか既に出遅れている感がありますが)、ドゥルーズの「アベセデール」を少しずつ見進めています。 まだ半分も見ていないのですが、どのトピックも非常に充実していて、内容をきちんと咀嚼していこうと思ったら、どうしてもスローペ…

塩基配列が文学になるとき――イアン・マキューアン『土曜日』論

塩基配列が文学になるとき――イアン・マキューアン『土曜日』論 『アンナ・カレーニナ』と『ボヴァリー夫人』という定評ある名作を読み通したこともある。・・・それで結局、何が分かっただろう?・・・神が細部に宿るとすれば、その細部にペロウンは感銘を受…

「第6回「音響」という視座」テニス批評宣言ーー音響面から考える錦織圭の強さの秘密

テニス批評宣言ーー音響面から考える錦織圭の強さの秘密 目下世界ランキング四位を自らの定位置に決めたらしい錦織圭のコート別の勝率を確認してみると、興味深いデータが得られる。アウトドア(室外)で行われた試合での通算成績が187勝99敗で勝率65.4%で…

人が映画タイトルを誤るとき

人が映画タイトルを誤るとき 世界映画史上、小津安二郎ほどその監督作品のタイトルを間違えられた映画作家は他に存在しないでしょう。たとえば、2013年10月に小津の生誕110年/没後50年を記念して刊行された『ユリイカ』の臨時増刊号[1]では、映画タイトルの…