There's Something Fishy

映画研究、文芸批評、テニス評論

2016-01-01から1年間の記事一覧

『オデッセイ』

(*下書きに変更して保存していた記事の再投稿です。) DVD&Blu-rayのレンタル解禁にあわせて映画『オデッセイ』(リドリー・スコット、2015年)のレビューを公開しました。 火星でジャガイモを栽培するSF映画を、ジャンル映画論的な観点から西部劇として…

映画と入浴

昨年12月に行われた日本映画学会のプロシーディングス(発表要旨集)が公開されました。 僕は是枝裕和の映画作品に頻出する「入浴」の意味について発表しました。 テマティックな読みと作家主義的なアプローチを組み合わせたテクスト分析です。 これだけ読ん…

夢日記

こんな夢を見た。 僕は友人の中国人男性と一緒にとあるオークションの会場にいた。場所は中国らしい。友人の目当てはスヌーピーがプリントされた限定Tシャツで、オークションは1,000ドルから始まり(中国なのになぜかドルだった)、あれよあれよと間に3,000…

『ブリッジ・オブ・スパイ』讃

冒頭、鏡に映る虚像として画面に導入されたソ連のスパイ(ということになっている男)は、続いて彼が描いている自画像に媒介された後で、初めて直接カメラの前に顔を晒すことになる。ここで強調されているのは彼を見つめる他者の視線の不在であり、じっさい…

ボウイが死んだ日

「でも、俺らが言うのも何だけどさ。ナンパしてついてくるような女って、正直どうよ?」 隣のテーブルでは先ほどから大学生風の男たち三人組が今日のナンパの戦果を報告し合っている。声をかけた女性のうち、何人からLINEのIDを聞き出し、そのうち何人からど…

『PASSION』(濱口竜介、2008年)

画面中央やや左に鎮座している巨大煙突から吹き出す白煙が画面左方向への艶かしい運動によって観客の視線を釘付けにしている間、スクリーン外からは男女の話し声が聞こえてくるのだが、どうやらここで彼らは「奇跡」について何ごとか語っているようで、ゆる…

『インサイド・ヘッド』レビュー

下馬評通り、大本命の『インサイド・ヘッド』が長編アニメ賞をとりました。 『インサイド・ヘッド』について書いた文章が先日公開されましたので、リンクを貼っておきます。 この作品を映画史のなかに位置づけようとする試みで、特に3節以降でその議論を展…

幽霊を蹴った話

ホテルの客室に入ったときから何となく嫌な気配は感じていた。室内の空気が冷たかった。もちろん、暖房が入っていなかったのだから、廊下よりも寒いのは当然だ。しかし、そういうものとは違った種類の寒さを、僕はそのとき確かに感じていたように思う。じっ…

霧の中のアイドル

映画評が『neoneo web』に掲載されました。 あえて大げさな言い方をすれば「映画評論大賞」の受賞第一作みたいな感じですかね。 webneo.org レヴューの対象はNMB48のドキュメンタリー映画『道頓堀よ、泣かせてくれ!』で、監督は『フタバから遠く離れて』(2…

「小津映画は遅いか?」

いったいどこに向けて書いているのやら、僕自身もよくわからなくなっているこのブログですが、おそらくここを覗いているみなさんが思っている以上にはアクセス数が伸びていて、せっかくなので宣伝や告知に使わせてもらおうと思います。 これは僕の所属する研…

全豪オープン開幕に向けてーーあるいは映画学入門書の効用について

「芸術のスペクトルに含まれておかしくないもののひとつにスポーツがある。ほとんどのスポーツ競技が"主役と敵役"の基本的なドラマの構造をとっていて、そのため劇的な観点から眺めることができる。"筋書き(プロット)"があらかじめ定まっていないために、…